背びれと胸びれには、毒をもつ棘があるので注意 |
一昨年の初夏、今日と同じこの場所で、振り回していた息子の網の目に、1センチにも満たない、小さなゴミのような魚がへばりついていた。
絶対に自分で世話をみるという息子に、気おされて、もってかえって、調べてみたら、ギバチというナマズの仲間の幼魚だった。
案の定、息子が世話をみたのは、最初のうちだけで、むろん家人がみるわけもなく、自然、餌やりと水替えは私の仕事となる。
昨年の初夏。体長15センチにまで成長した初代を、故郷に返しに高麗川を訪れた帰り際、またしても、息子の網にかかったのは、ギバチの幼魚。
こんどばかりは絶対に世話をみますと、目をうるませながら、兄弟口をそろえるものだから、まぁいいかと、もってかえって、まんまと一昨年とおなじことを繰り返す。
その二代目を、今日、里帰りさせたのだ。
初代の彼は、荒々しく、大胆で、人にもよく慣れて、最後のほうなどは、はしでつまんだ餌にも食いついた。水槽の掃除役にと、とってきた川エビ軍団は、一夜で壊滅した。暴れん坊の彼が、一匹残らず喰ったのだ。
二代目の彼は、臆病で、流木の影に隠れたまま、夜になってもなかなか出てこない。餌を落としても、人が見ているときには、決して口にしない。初代に比べると、食も細いし、体もスリムにみえる。
ナマズも十人十色なんだと感心していたが、ふと、二代目は彼ではなく彼女だったのでは、と思いいたった。
ヤマベやアユが泳ぐ清流、高麗川。「こまがわ」と読む |
放流を待つ二代目 |
今日の高麗川は、人影もまばらで、セミの声がやけに大きく聞こえた。
二代目の彼女を見送ったあと、あまりの暑さに、ゴーグルをつけて、水中の岩にしがみつきながら、ぼぅーっとした。
目前を横切るハヤの群れは、きらきら光って、ほうり投げたナイフのようだ。
息子の網には、ヨシノボリはかかったようだが、今回はとうとうギバチはかからなかった。
で、当たりました。ギバチの恩返しだろうか?
60円の価値。されど心の中で小さくガッツポーズ |